うそつきは恋のはじまり
「んっ、ゴホンッ!」
「へ?うわっ、塾長!」
七恵を抱きしめていると、後ろから聞こえた咳払いをする低い声。なんだろうと振り向くとそこには先ほど廊下を走るなと怒っていた塾長。
気まずそうに咳払いをする姿からここが塾の目の前であることを思い出し、恐る恐る建物のほうをみると、そこには廊下からこちらを見る中高生の生徒たちと塾の先生たち……。
ま、まずい、やらかした……!
我に返り体を離した俺と七恵に、塾長はまた「ゴホンッ」とまた咳払いをひとつした。
「あー……原くん、授業後とはいえまだ生徒たちもいる時間に、それも塾の目の前でそういった行為はだな……」
「す、すみません!」
「まぁいい、今日は寒いし話をするなら中のエントランスに入りなさい。ただし、抱擁やそれ以上は禁止!!」
気まずいやら恥ずかしいやら、様々な気持ちで頭を下げた俺の隣で七恵も同じような顔で同じように頭を下げた。
「……中、入ろっか」
「う、うん」