うそつきは恋のはじまり
「でね、彼方くんと仲直りして一緒に帰って、うちに寄っていっぱいチューしてねっ」
デレデレと先日のことを話すと、莉緒はふふんと笑って問う。
「へー、で?チューのあとは?」
「チューのあとは、終電の時間まで一緒だったの!でもね、帰り際に彼方くんが『七恵と離れたくないな』、なーんて言ってくれて……きゃー!恥ずかしい!」
「……相変わらず甘酸っぱい仲ですこと」
ところが期待した答えとは違かったようで、莉緒はつっこむ気力もなく呆れたように私から腕を離し隣の席についた。
「こんなに幸せでいいのかなぁ……あーもう!彼方くんが好きすぎて、今ならなんでもできちゃう!」
「何でも?」
「うんっ、なんでもどーんとこ……え?」
一度は普通に会話をしたものの、突然会話に割り込んだその低い声に違和感を感じ、冷静になる。
その瞬間、目の前の机にドカッと置かれたのは山のような書類。
「じゃあ、やってもらおうか」
その言葉とともにふん、と笑う北見さんに、先ほど会話に割り込んだのは彼だったのだと気付いた。