うそつきは恋のはじまり



「……な、なんですかこれ」

「今うちの会社がフェア中なのは知ってるな?


「あ、はい。年末の送料無料キャンペーン中ですよね。例年以上の売り上げで出荷業務部は大変みたいですね、うちは全然関係ないですけど……」

「それが、関係なくないんだよ」



深刻なトーンで言う北見さんに、莉緒と私は「へ?」と首を傾げる。



「機械がエラーを起こして、発送伝票を全て手書きすることになった」

「えっ」

「おまけに出荷業務部の人間が昨日差し入れて貰った饅頭があたって食中毒で半分以上ダウンした」

「えぇっ」

「よって商品部も全員手伝い!終わるまで年末年始の休みなし!!」



え、えぇーーー!!!

そんな、ありえない、と言葉を失う私の横ではさすがの莉緒も不満げに顔を歪める。



「なんでよりによってこの仕事納め直前に……」

「今社内にいる奴ら全員大騒ぎだよ。しかも有給とってる奴も多いから人も圧倒的に足りてないし……とにかくお前らもやれ!」

「そんなぁ……休みなしなんて嫌ですー!年末年始は彼方くんと毎日デートする予定がっ……」

「嫌でもやれ!幸せなんだろ!?なんでも出来るんだろ!?」



確かになんでも出来る気がするって言ったけど……だからって、こんな量無理ー!

けれど拒否できるわけもなく、突然の忙しさにたちまちフロアは修羅場と化す。


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