うそつきは恋のはじまり



「へー、かわいい系じゃん。彼方かわいい子好きだよねぇ」

「かわいい子が嫌いな男はいないと思うけど」

「そうだけどさぁ……あ、でも年上って珍しいじゃん?いくつ?」



ショートカットの女の子はそう大きな声で問いかけながら、私を上から下までまじまじと見る。



「さ、30、です……」

「へー、30……30!?は!?うそでしょ!?」

「いや、本当」



『30歳』、その一言に場は一気に「30なの?」「30だって」とざわつく。

そ、そんなみんなして人の年齢を繰り返して言わなくたって……!

はずかしいやら悲しいやらで肩身の狭くなる私に、なかでも目の前の二人は余程驚いたのか信じられないといった顔でこちらを見る。



「でもすごくない!?原くんと七恵ちゃんで12歳差恋愛……いいね!燃えるね!」

「も、燃える……?」

「うん!だってそんな年齢気にしないくらいラブラブってことでしょ!?いいじゃん!」



けれど一人の女の子のフォローするような言葉に、みんなは一気に「だよね」「確かに」と頷きだす。

否定することなく、こうして受け入れてくれる。やっぱり、彼方くんの友達だ。みんな、いい子だなぁ。



「……うん、ありがとう」



照れながら笑って会話に加わる私に、隣では彼方くんも嬉しそうに笑顔を見せた。




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