うそつきは恋のはじまり
「あ、大したものじゃなくていいならこれあげる」
「へ?」
そして取り出されたのは、おそらくお菓子のおまけだろう金平糖の形をしたストラップ。
ピンク、黄色、白の三色が可愛らしい、リアルな飾りだ。
「って、こんなのいらないか……」
「い、いいの!?もらっても!」
「え?いるの?」
「ほしい!かわいいー!」
その可愛さに思わず手にとり眺めると、彼はまさか本当に喜ぶとは思わなかったようで、少し驚いてから笑う。
「そう?ならよかった。あげる」
「いいの!?いらないの!?」
「どうせ友達から貰ったものだから」
優しい彼から、もらったストラップ……しかもこんなに可愛い。
嬉しさを抱きしめるように、私は両手できゅ、とストラップを握りしめた。
「ありがとう!一生大切にします!」
「ぶっ、一生って……大げさ。あはは、おかしー」
けれどその喜び方が彼にとっては面白かったようで、電車内ということも忘れ「あはは」と大きく笑う。
爆笑してもかっこいい……!
明るいその笑顔に、心はきゅんと掴まれる。
「ね、名前なんていうの?」
「えっ、あ……七恵。川崎、七恵」
「七恵ね。俺は原彼方」
「彼方くん……」
彼方、彼方くん。心の中で名前を繰り返し呼んでみる。
美少年は名前も爽やかだ……。