うそつきは恋のはじまり



新年会が始まり、二時間ほどが経っただろうか。パーティルームを出た私は近くのトイレへと向かい廊下を歩いていた。



「ふぅ……」



案外みんな優しくて、面白い子ばっかりでよかった。きつそうな顔立ちの子達も意外とフレンドリーで話しやすいし……食べ物が揚げ物ばかりなのは、正直胃にくるけれど。

でも友達の前での彼方くんの表情は、やっぱり少し幼くて、かわいい。家族とか気の知れた人の前では、ちょっと無愛想なタイプなのかな。



ふふ、とついにやけてしまいながらトイレのドアを開けようとした、その時。



「てかさー、ありえなくない?さっきの」

「いやー、あれはビビった。ないわー」



トイレの中から聞こえてきたのは、先ほどの少しきつめの顔立ちの2人組。

なんとなく小さくドアを開け中を覗き込めば、鏡の前でファンデーションを塗り直すショートカットの子の隣で、ロングヘアの子は熱心にアイラインをひきなおしている。

なんの話だろ、とついそのまま聞き耳をたてた。


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