うそつきは恋のはじまり
「彼方の彼女がよりによって、12も上とか!ありえないでしょ!」
「ホント。彼方狙ってたのにー!なんであれなわけ!?」
って、私のことだ!!
二人きりになった途端にこぼれたのであろう彼女たちの本音に、ぎくっと心臓が嫌な音を立てる。
ていうか、『あれ』って……ひどい。確かに美少年な彼方くんの足元にも及ばない顔だけどさ!もうちょっとこうさ、言い方をさ!
「30歳が18歳に手出しってどういうことよ。どんだけ同世代に相手されないんだって感じ」
「だから売れ残ってるんじゃん?」
「売れ残り!半額に値下げされててもいらなーい」
う、売れ残り……!?
笑いながら話すふたりの言葉は、それはそれはとても容赦なく、耳が痛いどころじゃない。あまりの衝撃に気を失いそうだ。
「そんな売れ残りに手出しする彼方に幻滅するわ。そりゃあいくら言い寄ってもなびかないわけだ、趣味おかしいんじゃないの?」
「ねー、イケメンだけど引くわー。あの女もさ、どう見ても変だって気付けって感じ」
……あれ。なんか、今の言われ方……すごく、いやだ。
自分のことは言われてもいい。売れ残りだろうと、何とでも言えばいい。けどさっきの言われ方だと、彼方くんが悪く言われてしまう。
『彼方に幻滅するわ』
私のせいで、彼方くんが変な目で見られる?彼方くんが、悪く言われる?いやだ、そんなのいやだ。
あたたかかったはずの心の奥が、一気にざわつきだす。