うそつきは恋のはじまり
「別に、俺は気にしてないし誰かに幻滅されようと構わない。……それでもやっぱり、七恵は気にする?」
「……そりゃあ、するよ」
「俺の言葉より、他の人の言葉を信じるの?」
彼方くんの、言葉より他の人の言葉を。
ううん、そんなことない。彼方くんの言葉が一番大切だし、大切にしたい。だけど……だけど。
「やっぱりダメ。埋まらない……変なんだよ、私じゃ、彼方くんには似合わないんだよ」
泣き出しそうな声で、しぼりだした言葉。
埋まらない12歳の差。変わらない、なくならない、今の私にとっての大きな壁。
似合わないなんて思いたくない。考えたくない。けど、見て見ぬふりをするには、あまりにも大きすぎる。
「……本気で言ってるの?」
ぼそ、と呟かれた一言。低く、真剣さともう一つの感情を含んだ色の声に目を向ければ、その表情は冷たく、静かな怒りを感じた。
「俺は何度も言うように、本当に七恵の歳なんて気にしてない。ただありのままの七恵が好きで、一緒にいたいって思ってる。……けど、七恵は違うんだね」
諦めたような呆れたような、悲しく冷ややかな瞳。初めて見る、表情。