うそつきは恋のはじまり

◆10.





「おはよー、仕事始め頑張るぞー」

「今年もよろしくお願いしまーす」



それから数日後の、1月上旬のとある日。

年末年始の休みがずれ込んだことから他の部署より数日遅れて仕事始めとなった営業部には、一年の始まりにふさわしく社員たちの明るい声が響いている。



「おはようございます」

「あ、吉木。ちょうどよかった、どうしたんだ?あれ」

「あれ?」



聞こえてくる莉緒と北見さんの会話から、彼が私を指差しているのだろうことがわかる。

なぜならそのフロアの端では、ずーんと肩を落としデスクに伏せる私の姿があったから。

それも、これまでの落ち込み方とは比にならないほど暗く沈んだ、この世の終わりのような顔をして。



「出勤してからずっとあの調子でさ」

「……塵に……塵になりたい……宇宙に散らばる塵に……」

「うわ、新年早々嫌な感じ……」



消え入りそうな声で呟く私に、莉緒は面倒くさそうに言うと席についた。


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