うそつきは恋のはじまり
「……というわけで、以来彼方くんとも連絡を取ってなくて」
始業前のざわつくフロアの片隅で、話を終えた私にふたりは呆れた顔をして「はぁー……」とため息をつく。
「それは七恵が悪い。確実に」
「うっ!」
莉緒から投げつけられたのは、厳しい一言。
「だって彼氏よりよその女の言葉信じてるってことでしょ?彼氏も可哀想に」
「だ、だって……」
「だってじゃない!だいたいあんたはいっつもウジウジウジウジマイナスなことばっかり考えてへこんで!その度相手するこっちや彼氏の身にもなりなさい!」
は、反論できない……!
強い口調で叱る莉緒に、またも言いかけた「だって」を口の中にしまい込んで、しゅんと肩を落とした。
「まぁまぁ吉木、正論だけど顔怖いぞ」
「悪かったですね!」
横で北見さんは呟くと、莉緒をどうどうと宥める。
「川崎は川崎で、それでいいのか?顔も中身もいい若い男なんてこうやってるうちにもすぐに新しい女出来るぞ?」
「それはやだ!」
「ならこんなことでいちいち揉めてる場合じゃないんじゃないのか?」
「けど……」
確かに、彼方くんみたいな男の子だったら、すぐに他の女の子が寄ってくるかもしれない。そんなのいやだ、けど。