うそつきは恋のはじまり
「……でも、彼方くんまで悪く言われるのは、もっとやだ」
『彼方に幻滅だわ』
彼のことを、言われることのほうが痛いよ。つらいよ。泣きたく、なるよ。
「好きだけど、それだけじゃダメなんだよ……」
好きなのに、堂々と揺らがずにいたいのに。それだけじゃダメなのだと知る。
好きだけじゃ越えられない。年齢の壁も、周囲の目も。好きなのに、それだけじゃ。
「七恵……」
呟いた私に、北見さんは呆れたようにため息をひとつついた。
「……仕方ねーな。川崎、お前今夜時間開けろ」
「え?」
「先輩として、じっくり話をしてやる」
先輩として……?
頼り甲斐のある瞳で言い切る彼に、少し戸惑いながらも小さく頷く。
いつもウジウジ、マイナスなことばかり考えている。そんな私じゃ余計にダメだって分かってる。
だけど、分からない。何が一番大切なのか。分からず、見失ってしまう。