うそつきは恋のはじまり
その夜、私と北見さんの姿は会社近くの居酒屋にあった。よく莉緒も加えて三人でくることの多いこのお店は、今日もがやがやと近場の会社のサラリーマンやOLたちでにぎわっている。
「はい、生ビールふたつね!」
店員が目の前に置いたジョッキを手に取ると、私と北見さんはコン、と小さく乾杯をした。
ゴク、ゴクと喉を通る久しぶりの生ビール。苦味と炭酸が、これまた美味しい。
「っ……ぷはぁっ!おいしー!やっぱこれですよね!あ、すみませーん、焼き鳥盛り合わせひとつ!」
「って普通に飲んでどうするんだよ、バカ」
「はっ!」
今日は北見さんと話をしに来たんだった!ビールを飲んだら一瞬で飲み会モードになっちゃったよ!
けど、話をするために来たのが居酒屋なんて……場所のチョイスを間違っている気もする。
ジョッキをテーブルに置いた私の向かいの席で、北見さんはスーツのジャケットを脱ぎ首元のネクタイを緩めた。