うそつきは恋のはじまり
待って、待って、今すぐ伝えたい気持ちがあるの。待って、待ってっ……
「彼方くんっ……!!」
大きな声で名前を呼びながら、閉まりかけたドアからガンッ!と車内に乗り込んだ。滑り込むように転びながらもなんとか乗ることの出来た私に、乗客は何事かとこちらを見る。
それはもちろん彼方くんも同じで、丸い瞳をさらに丸くしてこちらを見た。
「なっ……七恵!?」
「よかった……間に合った……」
どっと込み上げる安心感に、ぜー、はー、とあかる息。それを整える暇もなく、私は顔を上げて彼方くんと向き合った。
「か、彼方くんごめんなさい!この前のことっ……本当にごめんなさい!」
「え?七恵、とりあえず落ち着いて、電車降りてから……」
「いいの!今聞いてほしいの!!」
言い訳や、嘘や弱音。余計な気持ちが混ざらないうちに。ありのままの気持ちを自分の言葉で伝えたいから。
「本当は、彼方くんとのことを変だなんて思わない!思いたくない!だって……私、彼方くんのことが大好きなの!!」
「七恵……」
「笑われても、何を言われても、私は彼方くんしか選べないの!!」
彼方くん、だから。