うそつきは恋のはじまり



降りた駅は、私たちの降りるはずの駅より何駅も手前。次の電車に乗ってもよかったけれど、少しふたりでゆっくり話そうということで、家までの道のりを歩くことにした。

厳しい冬の寒さも、走ってきたり恥ずかしくなったりと熱くなってばかりだった私の体にはちょうどいい。



「正直さ、ちょっとヘコんだよ」

「え?」

「だって好きな人に自分とのこと『変』って言われたんだよ?やっぱり七恵も、そう思ってたのかなとか、何度俺の気持ちを伝えも伝わらないのかなとか、思って」



歩きながら彼方くんが呟くと、白い息が漂う。その気持ちをつなぐように、彼の大きな手を握った。



「……私ね、自分で気にしてるのもあるけど、彼方くんがバカにされるのが一番怖いの」

「俺が……」

「『あんなのと付き合うなんて彼方もおかしい』って、そう思われるのが嫌で……あんなこと、言っちゃった」



『私じゃ、彼方くんには似合わないんだよ』



似合わないかもしれない、変に見えてしまうのかもしれない。また同じように言われたり、へこむこともあるのかもしれない。

けど、だけどね。



「それでも、彼方くんと一緒にいたい。……ごめんね、わがままで」



真っ直ぐに目を見て言った私に、彼方くんは笑顔を見せる。


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