うそつきは恋のはじまり
「こ、れ……」
「クリスマス、なにも贈れなかったから。まぁ安いものなんだけど、俺が一人で稼げるようになったらもっとちゃんとした指輪持ってプロポーズするから、それまで待っててくれる?」
それは、『いつか』の未来を誓う約束。少し照れながら笑う彼に、嬉しさからまた涙がこぼれてしまう。
「うんっ……待つ、待つよぉ、何年でも待つ〜!!」
「あはは、泣きすぎ」
声をあげて笑いながら、彼方くんは私の体をぎゅっと抱き締めた。今日も香る彼方くんの匂い。優しい、あたたかな体温。
誓ってくれる、想ってくれる彼を信じよう。迷わずに惑わずに、つなぐ彼の手を離すことなく。大好きの気持ちを、抱き締めて。
「けどすごい勢いの駆け込み乗車だったね」
「うっ……恥ずかしい、忘れてください……!」
「あれは忘れたくても忘れられないよねぇ」
余程ひどい駆け込み方だったのだろう、抱き締めたまま思い出したように言う彼に、恥ずかしさに顔がかぁっと赤くなる。
私ってばまたみっともない姿を……!
「北見さんと居たんだけどさ、北見さんに『俺にしろよ』って言われて、ようやく自分の気持ちに気付けたの。そしたらどうしても、今すぐ伝えたくて」
「へー……男とふたりでいて、しかも告白されたってこと?」
「え!?あっ!えと、それは……!」
し、しまったー!必死だった理由を説明したいあまり余計なことまで言ってしまった!
彼方くんは笑っているものの、そんな話を聞いていい気持ちにはならないだろう。
私だったら彼方くんが女の子に告白されたなんて聞いたら不安になって落ち込んで妬いてっ……ってそんな妄想より先に、彼方くんに説明しなきゃ!