うそつきは恋のはじまり
「で、でもね!?それは北見さんなりの嘘で……」
「ひどいなー、七恵は。俺が悩みながらバイトしてるうちに男と飲んでたんだ?」
ってやっぱり怒ってる!
顔をあげた先にある唇をぶーと尖らせる彼方くんの顔。そんな表情もまたかわいい……!じゃなくて!
「ご、ごめんなさい!心から謝ります、ごめんなさい!」
「許さない」
両手を合わせて謝るものの、彼方くんは腕の力を少し緩め、私と額と額を合わせる。
「どうしたら許してくれる……?」
「んー、じゃあ七恵からキスして」
「え!?」
き、キス!?私から!?
「しかもすっごいいやらしいやつね」
「えぇ!?」
いやらしいやつ!?
なんてものすごい要望……!だけど誠意を伝えるためというか、折角の彼方くんのお願いだし……い、いざ!
覚悟を決め、笑顔で待つ彼方くんにそっと顔を近付ける。ところがいやらしいキスなど自分から出来るわけもなく、ちゅ、と触れるだけの軽いキスをするとすぐに唇を離した。
「……足らない」
「む、ムリ〜!恥ずかしくて出来ない!」
「じゃあ、俺からするよ?」
彼方くんはそう言うと、私の返事を待つことなく顔を近付けキスをする。
頭を押さえて、角度を変えながら舌を絡める深い深いキス。口の中から脳の奥まで、彼方くんでいっぱいになる。
ゆっくり離れた唇に、彼の長い指先は私の頬を撫でた。