うそつきは恋のはじまり
愛があるから
◇11.
それは、彼方くんと付き合ってから三ヶ月が経とうとしているある日のこと。
「彼方くーんっ」
「七恵!」
三月上旬のまだ寒い金曜日の夜。
いつものように駅前で待ち合わせをしている私と彼方くんは、手をふり合流をした。
「ごめんね、待った?」
「ううん、今来たところ。あ、それメールで言ってた新しいコート?可愛いね」
「えへへ、ありがとうっ」
春物の、少し薄手の白いコートの裾を揺らす私に、彼方くんは笑顔で頭を撫でた。
そんな彼の腕にぎゅっと抱きつく私の左手薬指には、きらりと光る銀色の指輪。
あれから私たちは、毎日特に喧嘩もなくこうして仕事やバイトの後に会ってご飯を食べて、チューまでの健全な関係。
些細なことに悩むことも減り、彼方くんともより一層距離が近付いた気もする。
「七恵、あんまりくっつかないの」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど……恥ずかしい」
「えへへー」
頬を染める彼方くんと、嬉しさに笑う私。今日もふたりは幸せいっぱいです。