うそつきは恋のはじまり




「今日はどうする?うちくる?」



ふたり食事を終え、自宅の最寄り駅へ向かうべく電車に揺られながら問うと、彼方くんはうーんと少し悩む。



「と思ったんだけど……今日は、うちにしない?」

「へ?」



『うち』って、つまり……彼方くんの家!?



「えっ、えぇっ……えぇ!!?」

「七恵、電車内は静かに」

「はっ!す、すみません……」



しー、と唇に人差し指を当てる彼に、周りの視線を感じながら口を抑えた。

で、でも彼方くんの家って……確か、実家だよね?それってつまり……。



「嫌ならやめとく?」

「えっ!?全然嫌じゃないよ!行きたい!行きたいなー!」

「本当?ならそうしよっか。明日休みでしょ?泊まって行って」



ま、待って待って待って……彼方くん、待って。

実家に行った初日にお泊まり?大丈夫?お父さんとかお母さんとか、大丈夫??

ある程度話してあるとか?いや、彼方くん意外とご両親にそういう話とかしなさそう……。

こんな時間にいきなり行ったりして、ご両親に驚かれたらどうしよう。どんな顔すればいいんだろう。て、手ぶらで行っていいのかな!?お菓子!せめて菓子折りっ……!



「七恵?駅ついたよ?」

「は、はい!!」



考えているうちに駅についていたらしく、彼方くんの声にはっと我に返り電車を降りる。



< 195 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop