うそつきは恋のはじまり
「うち、こっちね」
彼に導かれるがまま、歩き出すのはいつもと反対方向の道。
笑って彼方くんと会話をしながら歩いているものの、頭の中はこれからのことでいっぱいだ。
ご両親に反対されたらどうしよう……。
『こんな12も上の女に大事な息子をやれるかー!!』
なんてちゃぶ台返しされたらどうしよう……!!
「と、飛んで来たちゃぶ台をどう避ければいいかな!?」
「へ?ちゃぶ台?」
ああ、いい挨拶も全然思いつかない!
全身に嫌な汗を書き始めたころ、彼方くんは足を止めた。
「ここ」
目の前にあるのは、住宅街に建つ二階建ての少し大きな一戸建て。
外壁を塗り直したばかりなのか、綺麗なベージュ色の壁にえんじ色の屋根が可愛らしい印象だ。
「す、すごいね……立派」
「色々リフォームして二世帯住宅だからね。見た目だけでかいの」
鍵をガチャガチャと回すと、重そうなドアを手慣れた様子で開けた。広い玄関からは彼方くんの匂いがして、これがこの家の匂いなのだと知る。
ところが、私の緊張とは裏腹に家の中はしんとした空気が漂う。
二世帯……ってことは、ご両親におじいちゃんおばあちゃん、あと妹さんがいるって言っていたよね?それにしては人の気配がしない気が……。