うそつきは恋のはじまり
「い、いいの?この前もストラップもらったのに……」
「いらない?なら捨てるけど……」
「ほしい!ください!ありがとうございます!!」
出会って数回のはずなのに、なんだかすでに彼に操られている気がするけれど……。
それよりも可愛らしい顔をしたケティーちゃんを両手でぎゅうっと抱きしめる私に、その顔はどこか嬉しそうだ。
「ついでだし、家まで送る」
「え!?い、いいよ。こんな時間まで待たせて……あ!寧ろ私が送ろうか!?」
「なんでそうなるの。本当、七恵って面白いよね」
人通りの少ない小さな駅の前、彼方くんは向かって右側……私の家の方向へと歩き出す。
「俺が七恵と話したいから、送らせて」
見せる笑顔に、またキュンと鳴る心。
話したいから送らせて、なんてそんなことを言われたら……断れるわけがない。
会っちゃいけない、話したらボロがでる、そう思っていた気持ちも一瞬で吹っ飛び、頷き彼と歩き出した。