うそつきは恋のはじまり



「……ちょっと前に、彼氏がいたんだけど」

「……過去形?」

「う、うん。フラれたから」



ぼそ、と呟いた言葉に、彼方くんは私を見つめた。



「ほら、私さっきもそうだけどキャラクターとか好きじゃない?前の彼氏はそういうのがすごいイヤだったみたいでさ、元々『もっと年相応になれよ』ってよく怒られてたんだけど」



きっと、元々合わなかったんだと思う。

でも好きだったから、嫌われたくない一心で頑張って彼に合わせて、迎えた1年。



「1年目の記念日のデート中にね、ちょっとしたことではしゃいだ私のことが彼はやっぱり気に入らなかったみたいでさ。『ガキっぽくて付き合いきれない』って、フラれちゃった」



記念日のデート中、見ていた店で私が『可愛い』と言ったものが、子供っぽいとか、そんな些細なことだったと思う。

怒られて、喧嘩になって、最後に言われた言葉。



『お前さ、幼い自分が可愛いとか思ってるわけ?年上っていうから、もっと大人っぽいと思ってたのに。……もう別れるわ。ガキっぽくて付き合いきれねーよ』



その一言を最後に、彼は去って行った。連絡先も変えられて、そのまま終わってしまった恋。



< 28 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop