うそつきは恋のはじまり
「ガキっぽい、って……その男もハタチになに求めてるんだか」
「え!?あ、あぁ!うん!ほら私見た目年上だからさ!そういうイメージと違うのがショックだったんじゃないかな!?」
って、しまった!
出そうになったボロを慌てて隠すように言い繕う私に、彼方くんは「ふーん」と疑いなく納得する。
「けど、よかったんじゃない?」
「え?」
すると、こぼされたのは予想外の一言。
「その人は結局七恵の見た目やイメージに惹かれてただけで、中身なんて見てなかったんだよ。だから、分かることも許すことも出来なかった」
「私の、見た目やイメージに……」
「本当に好きだったなら、相手の趣味に共感は出来なくたって、同じように大切に出来るはずだって、思うよ」
それは、彼方くんの人柄を現すような真っ直ぐな言葉。
嘘だとか、いいことを言おうとしているのとは違う。思ったことを、そのまま伝えてくれている。
「その人よりも七恵のことをちゃんと分かる人は他にいるって、俺は思うけど」
私のことを、ちゃんと分かってくれる人。他の誰かが分かってくれなくたって、唯一分かってくれる人。
そんな人、いるのかな。そう不安に思う気持ちのほうが、大きいけれど。
「七恵?どうかした?」
「っ〜……」
不意に足を止めた私の瞳からこぼれたのは、大粒の涙。