うそつきは恋のはじまり



『年上っていうから、もっと大人っぽいと思ってたのに。ガキっぽくて付き合いきれねーよ』



今でも思い出す、あの日の彼の呆れたような言い方。

ガキって!年上に向かって、ガキって……!



「すみませーん!生おかわりー!どんどん持ってきてー!」

「ちょっと七恵、飲み過ぎじゃないの?」

「いーの!飲んでも飲んでも涙として排出されるんだからー!」



すぐさま運ばれてくる大きなジョッキの生ビールを、私はまたグビグビと飲む。



「まぁ確かに、ガキっぽいって言いたくなるのも分かるけどなぁ」

「えぇ!?」



って北見さんまでそう言う!?

枝豆を食べながら言う北見さんに、隣の莉緒も否定はしない。



「だってお前のそれ」

「へ?」



北見さんがそう指差すのは、テーブルの端に置いてあった私の携帯。

じゃらっとストラップがついたそのスマートフォン。カバーはパステル系の色をした、『ケティーちゃん』という若い子に人気の猫のキャラクターの絵が描いてある。



「なんだっけ、それ。ケリーちゃん?」

「ケティーちゃん、です!今若い子に大人気の猫のキャラクターですよ!可愛いですよねぇ、好きすぎてキーホルダーも何もかもケティーちゃんにしてるんです」

「そういうとこだろ、ガキっぽいって」

「うっ!」



率直に言う彼に、自分でも少しわかっていただけに心臓がぎくっとする。


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