うそつきは恋のはじまり
「え!?七恵!?ご、ごめん、無神経だった!?」
「ううん、違うの……嬉しくて、つい」
涙の理由は、きっと。
『その人よりも七恵のことをちゃんと分かる人は、他にいる』
彼方くんのその言葉が、なによりも心強く、嬉しかったから。
悲しい気持ちも溶かしてくれる。そのあたたかさに、涙が止まらないよ。
「……七恵、」
ぽろぽろとこぼれる涙を、彼方くんは伸ばした指先でそっと拭う。
手を頬に添えられるようにして、初めて触れた彼の体温は少し冷たくて、熱い私の肌とは正反対だと思った。
「ご、ごめんね。いきなり泣いたりして。恥ずかしい……」
「ううん、いいよ。泣きたい時は泣くのが一番」
「けど……」
「それに、泣いても笑っても、どんな顔の七恵も可愛いよ」
触れたまま言う彼は、穏やかで優しい瞳に私の泣き顔をしっかりと映す。
まっすぐ見つめるその目に、ドキ、と心臓が音を立てた。