うそつきは恋のはじまり



もし、万が一、億が一、彼に告白してOKをもらったとする。けどそこで『実は三十なんです』なんて言って、『それは無理』ってなっても嫌だし……。

北見さんの言うとおり。素直に言わないうちは、私は彼に気持ちを伝えることなんて出来ないし、歳の差云々言う資格なんてない。



「ち、ちなみに北見さんが18歳だとして、ハタチだって聞いてた相手が30歳だって知ったら、どう思います……?」

「俺?うーん……ドン引きかなぁ」

「えぇ!?」



ど、ドン引き……!?

北見さんからの答えはグサッと刺さり、私は悲しみに打ちひしがれるようにデスクに伏せた。



「わかった?嘘を訂正出来ないなら尚更やめておきなよ。結局、上手くいきっこなんてないんだから」

「うぅ……」



彼に『好き』って言えるような自分になる、思うままに恋してみよう、そう決めた気持ちなのに、そもそもの出だしがまずダメだ。



彼の中では、私は20歳。“20歳の私”を、可愛いと言ってくれた。

私のことを分かる人がいるはずって言ってくれたけれど、彼方くんは私を分かってくれるかな。

本当のことを、言っても。嘘つきな私を知っても。あの笑顔を向けてくれるのかな。





< 35 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop