うそつきは恋のはじまり
もし、万が一、億が一、彼に告白してOKをもらったとする。けどそこで『実は三十なんです』なんて言って、『それは無理』ってなっても嫌だし……。
北見さんの言うとおり。素直に言わないうちは、私は彼に気持ちを伝えることなんて出来ないし、歳の差云々言う資格なんてない。
「ち、ちなみに北見さんが18歳だとして、ハタチだって聞いてた相手が30歳だって知ったら、どう思います……?」
「俺?うーん……ドン引きかなぁ」
「えぇ!?」
ど、ドン引き……!?
北見さんからの答えはグサッと刺さり、私は悲しみに打ちひしがれるようにデスクに伏せた。
「わかった?嘘を訂正出来ないなら尚更やめておきなよ。結局、上手くいきっこなんてないんだから」
「うぅ……」
彼に『好き』って言えるような自分になる、思うままに恋してみよう、そう決めた気持ちなのに、そもそもの出だしがまずダメだ。
彼の中では、私は20歳。“20歳の私”を、可愛いと言ってくれた。
私のことを分かる人がいるはずって言ってくれたけれど、彼方くんは私を分かってくれるかな。
本当のことを、言っても。嘘つきな私を知っても。あの笑顔を向けてくれるのかな。