うそつきは恋のはじまり



「そんなにまじまじと鏡見て、どうしたの?」



にこ、と見せる笑顔は、今日もやっぱり可愛らしい。

こんな美少年が人を痛いやつとか思うわけないよ!うん!



「七恵?」

「え!?あ、あー……えと、は、歯に青のりが、ついてないか不安で……」

「青のり?」



って私またなんておかしな言い訳を!電車内で青のりチェックしてる女なんて可愛くないにもほどがあるよ!

咄嗟の言い訳を心の中で後悔する私に、彼方くんの顔はずいっと近付く。



「なにもないよ、大丈夫」

「そ、そう?」

「うん。今日も可愛い」



触れそうなほどの距離と『可愛い』の一言。それらが恥ずかしくて、頬がボッと赤くなる。

な、なんて言葉巧みな……!

素直なのか、お世辞なのか、女の扱いが上手いのか……いずれにしても、そう言われれば恥ずかしいし嬉しい。


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