うそつきは恋のはじまり
「実は言ってなかったんだけどさ、最近この辺りに変な人が出るんだって」
「え!?そうなの!?」
「ベビーカーを押した女性が、ゆっくりゆっくり歩いてて、ベビーカーの中を見るとそこにあるのは首のとれかけた人形が……」
「イヤー!!聞きたくないーー!!!」
まさかの突然の怖い話に、そういった話が苦手な私は耳を塞ぐ。
そんな反応を見て彼方くんはあははと笑いながら、私の家の方向へ歩き出した。
「ほ、本当!?本当に出るの!?」
「んー、出るような、出ないような……」
「どっち……って、あ!もしかして、からかった!?」
「さぁ?」
慌てて追いかける私に、彼が向けたのはイタズラな笑み。
この反応は……からかわれた。けどそんなからかう笑顔すらも可愛いんだから、ずるい。
あれ、でももしかして今の……私を送る口実?
送らなくていい、って言っているのに。こうして、からかって流して送ってくれちゃうんだもんなぁ。
……優しい、なぁ。
そんな彼の優しさを断れるわけもなく、私は彼の隣を歩いた。