うそつきは恋のはじまり



「いい歳して身の回りのものを全てキャラクターで揃えるって……しかも若い子向けのキャラクター」

「い、いいじゃないですか!好きなものは好きなんですから!」

「北見さんってば、ストレートに言いすぎですよ。確かに七重はキャラクター大好きで、部屋もぬいぐるみと白いフリフリばっかりで、ピンクばっかり身につけて、読書といえば少女漫画ばっかりで落ち着きなくて感情的で、いくら見た目が若いからってこれで30歳かと思うと少し痛いですけど」

「莉緒!?フォローになってないよ!?」



でも、確かにそう。

元彼に『ガキっぽい』と言われるところは、先程莉緒が言ったところに全て現れているのだろう。



私は、可愛いものが大好き。

キャラクターも、子供が好むようなものが好きだし、好きになるとキーホルダーやぬいぐるみをあつめたりつけたり……。

何事にも、使いやすさや便利さよりも可愛さを優先したいタイプだ。



仕事中は制服だけれど、通勤時の私服の服装だって莉緒はニットのカットソーにスキニーパンツといった格好をしているのに対し、私は紺色に小花柄のミニ丈ワンピース。

茶色い髪を毛先だけ巻き、目の上で切り揃えたパッツン前髪。黒目が大きく見えるコンタクトだって欠かせない。



性格も、昔から言われるのが『落ち着きがない』。

いろんなことにいちいち一喜一憂して、今もこうしてお酒に逃げて号泣している。でもひとりで静かに切り替えるなんて、できるわけもない。



「そもそもなによ!大人っぽいって!ビールも飲めるしクレジットカードだって持ってるし、車の免許だってあるんだから!」

「それが大人の証拠って思ってるところがた子供だよなぁ」

「うっ!」



“大人”、ってなんなのか。ならなきゃいけないものなのか。……まぁ、なれないからフラれたんだろうけどさ。

また考えて、悩んで落ち込んで、空にしたジョッキをテーブルの上に置いた。




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