うそつきは恋のはじまり
「か、彼方くん……?」
「……手、つないじゃダメ?」
「う、ううん!ダメじゃない!寧ろ喜んで!!」
「ならよかった」
嬉しさと緊張でまたも余計な言葉を返してしまう私に、彼方くんは優しい笑みを向ける。
手を、つないでいる。私と彼方くんが、手をつないで歩いている。
なんて嬉しくて、幸せな光景だろう。
彼方くんの手、大きいな。肌もスベスベで、ごつごつしていて、男の人の手だ。
ど、どうしよう……ドキドキして、汗かいてきた。手も汗ばんできた。
こんな寒い日なのに汗かいてるとか思われたらどうしよう。手がベタベタするとか思われたらどうしよう。
「……、」
そんなことを思いながらちら、と彼方くんを見ると、彼は少し照れたような顔で手を引いていく。
何気ないふりをしながら、本当は意識してくれている?……だとしたら、嬉しい。ドキドキする心が、止まらない。
その度余計、言えなくなる。言えないよ。だって引かれたり、嫌われたりしたくない。
握ってくれるこの手を、離したくない。