うそつきは恋のはじまり
きっと、私は本当のことは言えない。だから、嘘を事実にしてしまおう。
努力の方向が間違っているのはわかっている。けど、それでも失いたくないの。叶うかすらも分からなくても、嫌われたくないの。
その為に、自分にできること。
ハタチを名乗ってもおかしくないような自分になろう。
「……ありえない」
翌朝。勤務開始前のデスクで雑誌を熱心に読んでいる私に、莉緒は冷めた瞳と一言をこちらへ向けた。
「あ、莉緒おはよー」
「おはようじゃないよ……何それ、何読んでるわけ」
「川崎も吉木もおはよー、ってどうかしたのか?」
後ろからやってきた北見さんの言葉も無視して莉緒が私の手元から取り上げたのは、私が読んでいた雑誌。
表紙に『彼のハートを撃ち抜く!冬のモテカワコーデ大特集』と書かれたその雑誌には、10代の若い女の子たちが写っている。