うそつきは恋のはじまり
「見てたなら声かけてくれたらいいのに……」
「そう思ったんだけど、なんか可愛かったから見てた」
これまたストレートな子!
照れるそぶりもなく言うその言葉にますます恥ずかしくなってしまう。
「おい彼方ー、なにナンパしてるんだよ」
「ナンパって、失礼な」
少し離れた位置からかけられた声に、視線を向ける。
するとそこにはからかうように笑う金髪の小柄な男の子と、不思議そうにこちらを見る黒縁のメガネをかけた男の子。どちらも彼方くんと同じくらいの歳だろうか、大学生といった様子だ。
一緒に遊んでたっていう、友達かな?
「彼方、誰その人?」
「七恵。ほら、前に話したじゃん」
「あぁ、電車内でサラリーマン投げたって人?」
「え!?」
メガネの男の子が納得するように言うと、彼方くんは「うん」と頷く。
あぁ、彼方くん、友達にそんな説明の仕方を……!いや、ここは知らないところで自分の話題を出して貰えていることに喜ぶべき?
嬉しいような素直には喜べないような複雑な気持ちで苦笑いすると、金髪の男の子は「あっ」と思い出す。