うそつきは恋のはじまり



「ごめん、友達がベラベラと」

「ううん。楽しかった」



改札を抜け、自然と私の家の方向へ向かい出すその足に、今日は何も言うことなく一緒に歩いて行く。



「ぬいぐるみ。頑張って取ってくれたんたね」

「あっ!いや、それは……嘘ついて、ごめん」

「ううん、嬉しかったよ。ありがとう」



きっと男の子として、見せたくない弱音があったのだろう。そんな彼方くんの小さな嘘が、とても愛しい。

笑う私の隣で、彼方くんは少し恥ずかしそうに顔をかいて歩いた。けど、それ以上に気になるのが……。



「か、彼方くんって、年下好きなの?」

「え?」



先程の彼方くんの友達が言っていた、『年下好き』の言葉。恐る恐る問いかけると、彼は思い出したように苦い顔で頬をかく。



「あー、さっきのあいつらの話?気にしないで。今まで何人か付き合った人が年下だったってだけだから」

「へぇ……そ、そうなんだ」



付き合った人、いるんだ……って、当然だよね。しかも年下が多いって。どれも地味にショックだ……!



「じゃ、じゃあ年上とかは……ダメとかじゃ、ないのかな」

「うん。好きなら歳とか関係ないよ」



っしゃあ!!

よかった!歳とか関係ない!ってことは30歳でも大丈夫……とは言ってないけど、でもとりあえす年上でも対象外ではないってことだよね!よし!

一度は落ち込んだものの、彼の言葉に思わず心の中でガッツポーズをした。


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