うそつきは恋のはじまり
『七恵のことが、好きだから』
彼方くんから、突然のキスと告白をされた夜。あの日私と彼は、恋人同士となった。
それからは連絡先を交換して、メールをしたり、帰りは時間を合わせて帰ったり……と過ごして、一週間。
恋人だから、といってすごくベタベタイチャイチャするわけではないけれど、前より縮まった彼との距離に毎日幸せでいっぱい。
こんなに幸せで浮かれないなんて無理……!
ぎゅっと抱きしめるスマートフォンには、今日も金平糖のストラップが光る。
「あっ、莉緒!北見さん!おはよー」
支度を終え、出勤してきた会社のビルの一階エントランスで、ちょうどエレベーターを待っていたらしい二人と行き会う。
茶色いコートとスカートをひらひらとさせる私に、タイトなミニスカートに黒いパンストというセクシーな莉緒とストライプ柄のスーツの北見さんは「おはよ」と笑った。
「なんだ、川崎。随分機嫌いいなぁ」
「七恵ってばここ一週間くらい毎日こんな感じで。私も何回か『なにかあったの?』って聞いてるんですけど」
「んふー、もう私今すっごく幸せで〜……聞きたい?聞きたいですか?この幸せを分けましょうか??」
「……毎回こんな感じだから面倒臭くて聞いてないんです」
「うわ、面倒臭……」
デレデレとして「んふふ、うふふ」と幸せムードを漂わせる私に、二人から向けられるのはうんざりとしたような冷ややかな視線。