うそつきは恋のはじまり



「そんなに必死になるほどいい男なのか?男なんてそこらじゅうにいるだろ」

「いい男ですよ!彼方くんは!かっこよくて、可愛くて、すごく優しくてたまに意地悪で……笑顔が天使です」

「……お前絶対騙されてるって。壺とか絵画とか買わされるなよ」

「買わされませんよ!失礼な!」



壺も絵画もないもん!

呆れを通り越して可哀想と心配が混じったように言う北見さんに口を尖らせて反論すると、バッグの中では『ピロリン』と音が鳴る。



ん?この音はメール……彼方くんかな?

白い大きめのハンドバッグからスマートフォンを取り出し見ると、そこには今朝同様またも彼方くんからのメール。



『今日バイトで七恵の会社の近くまで行くから、駅で待ち合わせして飯食わない?』



へぇ……バイト、しているんだ。まぁそうだよね、大学生ならバイトくらいするよね。

一緒にごはん!もちろん行く!『行く!バイト何時まで?』……っと。



「なに、早速18歳とメール?」

「うんっ。今日の夜、会社近くの駅で待ち合わせしよーって」

「へー……」



ポン、と止まったエレベーターから降りながら、莉緒は「あ」と思いついたように言う。



「じゃ、その天使とやらがどんなもんか見せてもらおうじゃない」

「へ?」

「駅でちらっと顔見るだけよ。七恵がそこまで入り込む男、ちょっと興味あるんだよねぇ」



ニヤ、と笑う顔も、莉緒くらい美人だと様になる。

そんな、見せるなんて彼方くんを見せ物みたいな言い方して!いい歳していちいち彼氏なんて見せたがったりするわけ……なくも、ない。


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