うそつきは恋のはじまり
「七恵、夕飯なに食べたい?好きな食べ物とかある?」
「えーとね、ハンバーグとか!だいすき!」
はっ!思いっきり子供の好きな食べ物の代表のようなものを挙げてしまった……!
いくら好きだからって!私もうちょっと空気読もうよ!パスタとか、サラダとか……いや、でも私野菜苦手だし、でもだからってハンバーグって!
「あ、えと……」
「本当?よかった、俺もハンバーグ好きなんだよね」
「えっ!?そうなの!?」
ところが、私の心のなかのうろたえなど気にもとめない彼方くんから言われたのは意外な言葉。
「これ言うと絶対『子供か』って言われるんだけどさ、ハンバーグと言えばやっぱり……」
「「半熟たまごとデミグラスソース」」
食の好みが同じらしく、思わずハモったその言葉に、お互い顔を見合わせふっと笑う。
「やっぱり?どこのファミレスとか行っても頼んじゃうよね」
「うん、わかるー!私はね、黄身にハンバーグをからめる派!」
「俺は卵をとっておくほうかな」
他から見れば、くだらない話題だろうって思う。だけど、こんなささやかな話題すらも、一緒に笑えることが嬉しい。
年齢以外は、そのままの私でいられる。好きなものを『好き』って言っても、受け入れてくれる。
そんな彼方くんが大好きで、しあわせだ。