うそつきは恋のはじまり
「そういえば、今週の日曜って空いてる?」
「え?うん、空いてるよ」
「じゃあ、デートしない?昼間から、街中ブラブラして」
手をつなぎ街を歩きながら、彼から言われたのは『デート』の言葉。
「う、うん!する!」
デート、デート。彼方くんと、一日中。想像しただけで踊り出す心に、私は勢いよく頷いた。
デート、かぁ。嬉しいなぁ。何着ようかな……。私服はいつもこんな感じで正直あんまり変わりないんだけど。
でもこの格好じゃ、『仕事の日も休日も代わり映えしない服=手抜き』って思われちゃうかな!?
ならフリルのミニスカートとか気合いいれて履いちゃう!?生足だしちゃう!?……いやいやいや、生足はさすがに無理。もうこの寒さになってきたら80デニール以下のタイツは履けない。
そうだ、莉緒も言ってた通り、年上に見える20歳の提で!それでいこう!家帰ったらクローゼットの中の服全部引っ張り出して……!
「七恵?どうかした?」
「え!?う、ううん!なんでも!」
つい考えるほうに意識がいってしまったものの、彼方くんの声にふと我に返る。
「さ、さーて、どこのお店に入ろうかなー?」
「あ、あの店とかどう?」
話しながら歩く私の右手には、しっかりとつないでくれる彼方くんの手。
こうしてまた今日も、嘘を重ねる自分がいる。でも、それでもそばにいたいんだもん。
いつか、痛い目を見るその時まで。
今だけは、夢を見させて。