うそつきは恋のはじまり



「チケット買ってくるから、七恵はここでちょっと待ってて」

「あっじゃあお金、」

「いいよ。俺に出させて」



彼方くんはそう言ってチケット売り場へと向かって行った。

な、なんて頼りがいのある子……!それくらい私が出してあげるのに!いくらでも買ってあげるのに!

でもその心が嬉しい……。ほれぼれとするうちにチケットを手に戻ってきた彼方くんと、飲み物を買い座席につくと映画の始まるまでのあと十分ほどの時間を過ごす。



「楽しみだね、映画」

「うんっ、早く始まらないかなぁ」



何気ない会話をしながら、ふと気付く。初めて、電車以外でこうしてとなりに座ること。

本当に、彼方くんとデートしているんだなぁ……。

パンフレットを眺める横顔、骨ばった白い手、長い足。どこを見ても、目を奪われてしまう。



男の子なのに肌きれい……。白いし、ニキビもない。思わずそんな肌に触れるように、彼方くんの頬を指先でツン、とつっついた。



「へ?なに?」

「えっ、あっわぁ!ご、ごめん!いきなり触ったりして……」



なにしてるんだか、私!

無意識に動いてしまった指先をパッと離す私に、彼は不思議そうにこちらを見た。


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