うそつきは恋のはじまり
「彼方くんって、プラス思考なんだね」
「別にプラスじゃないよ。ただの事実」
「……そっか、事実かぁ」
そうだね。私は単純だから、その一言でこの胸の痛みすらもよかったと思えてしまうよ。
あの日があって、今がある。彼方くんと私がここにいる。
全て、偶然で運命で、紛れもない事実。その全てを、愛しいと思う。
「デートの続き、しようか」
「うんっ」
愛しいから、だからこそ。心から大切にしたいと思った。
嘘つきのままでも、この幸せを離したくない。彼の手を、離したくない。
そう願うように彼の腕に抱きついて、冬の街をふたり歩いた。