うそつきは恋のはじまり
◇5.
「うふ、うふふ……」
彼方くんとのデートの翌日、月曜日。
自分のデスクで仕事の合間に見つめるのは、ケティーちゃんの絵柄のスマートフォンのケースに貼られた一枚のプリクラ。
『ななえ・かなた』と書かれた、私と彼方くんがピースをして写るそのプリクラに、私の顔はいつも以上にだらしなく緩む。
昨日はあの後、彼方くんとご飯を食べて、ゲームセンターで遊んで、夜までラブラブして……幸せだったなぁ。
本当はもっと一緒にいたかったけど、まぁ相手は未成年だし。健全にね。
でも、一緒に話しながら歩いて、それだけのことがすごく幸せ。こんなに幸せでいいのかなぁ、いいよね、うふふ。
「んふふ」と堪えきれずにこぼれるあやしい声に、突然何かで頭をバシッと叩かれた。
「わっ!?」
「おい30歳。浮かれてないで仕事しろ」
驚きに顔を上げてみれば、そこにいた北見さんは私の頭を叩いたらしいその書類の束をデスクに置く。