重なり合う、ふたつの傷
レモンイエローの自転車で履歴書を買いにちょっと遠いコンビニへ行った。
アルバイトをしようとしているコンビニとは別のお店。
ついでに赤い箱の板チョコも買った。天野くんを想って。
チョコよりもキャンディが好きな私。特にドロップみたいな色の綺麗なのが好き。なのに、板チョコが欲しくなった。
公園の入り口に自転車を止め、ベンチに座り、板チョコの銀紙を剥がした。
チョコをかじりながら空を見上げると、月がなかった。
星もない。
きっと今夜は雨。
この銀紙を丸めて空に投げたら満月になって、私の背中をそっと押してくれるだろうか。
家に帰り、履歴書を書いた。妙に力んでしまい、右上がりのいつもの文字と違う。
どうやら雨が降り始めたようだ。雨音が聞こえてくる。それを聞きながら、履歴書を五枚書いた。
三枚目に書いたそれを持参すると決めた。
両親にも天野くんにもバイトの話はしなかった。
話したのは雨宮先生だけ。
学校の許可が必要だったから。