重なり合う、ふたつの傷
面倒な事態になるかもと身構えていたけど、雨宮先生は思っていた以上に話のわかる人だった。
面接の日。
ウエスト部分を何度か巻いて丈を短くしていた制服のスカート。駅のトイレでその丈を元に戻し、コンビニへ。
面接はコンビニのバックヤードと言われている倉庫兼事務室で行われた。
苦手な体育会系の店長と一対一。
志望動機を聞かれ「様々な人が訪れるコンビニで接客やマナー、社会性を身につけたいからです」と答えた。
緊張して左手で何度も髪を触ったけど、社会の一員になった気がした。
面接後、緊張をほぐすようにルミと駅ビルへ行き、量り売りの石鹸や入浴剤を扱っているお店へ連れていってもらった。
店内に入るとフルーツ系のいい匂いが鼻をかすめた。
「梨織にはこれがいいんじゃない?」
ルミが選んでくれたのはラベンダーの入浴剤。
これならお父さんもお母さんも気に入ってくれそう。
自分用にはミントの入浴剤とハチミツの石鹸を買った。
その夜は、ラベンダーの入浴剤を入れてみた。
薄紫色の心安らぐお風呂になった。
いつもはあまり温まらずにシャワー中心で出ちゃうけど、ラベンダーの香りに誘われて、良い汗を沢山掻いた。