重なり合う、ふたつの傷
「あれってしつけじゃなくて虐待だよね?」
ルミが私に聞いてきた。
「うん……」
虐待が虐待を生むって本当なんだ。私も我が子にそうしてしまうのだろうか。
スプーンを持つ手が震え、理想の未来予想図が破れかけた。
私じゃ天野くんを幸せにできない……。
抹茶パフェの苦味だけが口の中で消えずに残った。
それは舌を這い、喉を塞ぐような苦味だった。私は白玉をそのまま飲み込んだ。
それから、天野くんとどう接したらいいのかわからなくなっていた。
天野くんもなんとなく素っ気なくて……。
もしかしたら私も虐待をするようなお母さんになると思われているのかもしれないと悲観的に受け取るようになった。
はまってしまったのは抹茶にではなく、排除できない記憶と自分自身のやるせなさにだった。
天野くんには明るくて元気で優しい女性が似合うと思う。
天野くんをずっと支えてくれるような少し大人な人。
それでも『おやすみメール』だけは続いていた。
公園の片隅でやっと花を咲かせたひまわり。
背の高いひまわりは天野くんみたいだった。
私のこの手がひまわりの花に届くように天野くんにもしっかりと届いている。
だからこの手を離さないようにしなくちゃ。
考えたってどうにもならないものにはまっている場合じゃない。