重なり合う、ふたつの傷
二人が体を重ねていると思うと、私の体はまるでルミの体と入れ替わったかのように火照ってきて、佐伯先輩の体の重みがリアルを装い伝わってきた。
私のまぶたの裏側に浮かび上がる蛍光色の蝶。
それは今のルミの姿。
きっとルミはもう経験済みで、痛いとかじゃなく気持ちいいんだと思う。
私にはわからないその感覚。
私には一生得られないかもしれないその感覚。
薄っぺらい胸に自分で触れてみた。
「だめだ……」
時々、嫌な感覚が襲ってきて、それを振り払うように手を離した。
その後もルミは佐伯先輩とうまくいっている様子で、金髪の拓巳の時と比べて佐伯先輩といる時間が長くなっていた。
その分、私は放課後から夜にかけてくるクラスのコのメールに対応する事で必死になっていた。
また『独り』ポツンと吸収されない雨粒のように退屈で、梅雨のような居心地の悪い日々が訪れるような気がして、怖かったのだ。