重なり合う、ふたつの傷
バイトを終え、清水くんに会いに行った。
ルミに公園で会う約束を取りつけてもらったのだ。
公園に着くと、噴水の前に清水くんの姿があった。
「清水くん、天野くんの事、聞かせて」
「まずいな、言うなって言われてんだ、天野に」
拒否反応を示している清水くん。
申し訳ないけど、粘りに粘って、無理やり聞き出した。
天野くんの心臓は普通に生活している分には問題ないらしい。
だけど、基本、運動は禁止。
だからバスケ部にも入らなかったんだ。違う。入らなかったのではなく、入れなかったのだ。
横浜駅から学校までバスを使っていたのも心臓のため。
天野くんは運動ができるようになりたくて執刀医のいるアメリカへ行ったそうだ。
全ての責任は私にあった。
私があんな事、言ったから。
───……
兎と森のカフェ
「そういえばね、蒼太くんの部屋にあるのと同じ漫画、うちのお父さんも好きなんだ。私が男の子だったら一緒にキャッチボールしたかったみたい」
「いいよな、そういうの」
「うん。公園で男の子とお父さんがキャッチボールしてるの。それをベンチで優しく見守ってるようなお母さんになりたい。家族を幸せにできるお母さんになりたいな」
「なれるよ、梨織なら」
「そうかな……」
「なれるって。俺が言うんだから間違いない」
……───
行ってみて新たな治療法があればそれを受けるためにそのままアメリカの高校へ編入し、治療法がなければ夏休み中に帰国する予定だと。
どちらにしろ私と一度距離を置いて、自分が梨織を幸せにできるかどうか考えてみたいと言っていたそうだ。