重なり合う、ふたつの傷
今夜、ここへ行けば川崎も良い思い出のある街に変わるかもしれない。
「零士はもう車で向かいました。僕、これから電車で行くんですけど、よかったら一緒に行きませんか」
情けないくらい地図を読むのが苦手な私はそのお兄さんと一緒に行く事にした。
下手をすると現在地さえわからなくなるという強度の方向音痴。
中学の時、ルミとテーマパークへ行って迷子になったという悲しい思い出がある。
地図は私を巨大な迷路に誘い込む。
その時は二時間くらい同じ所をぐるぐる回って、やっとルミを見つけた。というより、ルミが私を見つけてくれた。
そうだ、ぐるぐる回っているうちに、そのテーマパークの有名なキャラクターと三回も擦れ違って、一回目は嬉しくて抱きついたけど、二回目、三回目は嬉しいのか悲しいのかわからなくなったんだ。
きっとそのキャラクターも私を不審に思っていただろう。
子供だったら迷子センターに連れて行ってくれるかもしれないけど、まさか中学生が迷子になるなんて。
今でもその時の事を考えると落ち込んでしまう。
……なんて、過去は取り敢えず忘れよう。