重なり合う、ふたつの傷
このお兄さんと二人きりで車で移動するなら遠慮したけど、電車なら安心。
それに、素朴そうで、悪い人ではなさそうだったし。
ライブハウスを出て、お兄さんと夜風の中を歩く。
「零士とはどこで知り合ったの?」
「私がバイトしてるコンビニです」
「コンビニ? 零士なに買うの?」
「ミント系のガム。それで、おつりの二円を募金箱に入れて帰るんです」
「へー、なんか意外だな」
「私も最初はそう思いました」
そんな会話をしながら山手線に乗った。