重なり合う、ふたつの傷


ルミはというと、日焼けして元気いっぱい。

清水くんとはうまくいっていて、私と天野くん、ルミと清水くんでダブルデートしたい、なんて言っている。

それも楽しそう。



「あれ、待ってよ。なにか忘れてない?」


思考回路をぐるっと一周させると、夏休みの宿題に行き着いた。

やってないどころか、全く手をつけていない状態。

天野くんにメールした。


《夏休みの英語の宿題一緒にやってくれる?》


すぐに返信がきた。


《いいよ。じゃ梨織は数学教えて。今からうちでどう?》


《はーい。すぐに向かいます》


またこんな溌剌とした気持ちで赤い電車に乗れるなんて。


電車の揺れさえも心地良くて、ゆりかごみたい。

つい、うとうと……。


『はっ!!』


気がつくと終点で、慌てて降りた。


「ん、メールが来てる」


見ると天野くんからだった。


《電車の中で寝るなよ》


私の行動パターンが見抜かれている。

でも、見抜いているのが天野くんだから、私は嬉しい。





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