重なり合う、ふたつの傷


そして、天野くんの部屋で夏休みの宿題に取りかかった。


「俺も宿題全然やってなくてさ。特にこれ。俺には無理」


厄介な事に数学の大久保先生は自分でオリジナルの問題集を作った。しかも超大量に。天野くんはそれに音を上げていた。


大久保先生は私たちの青春という名の夏休みをどう考えているのだろうか。


私は英語でノックアウト寸前。


お互いわからない問題を教え合った。



途中で天野くんのお母さんがグレープフルーツのゼリーを持ってきてくれた。


しかも手作り。


果肉が沢山入っていて、爽やかですごくおいしかった。


「蒼太くんのお母さん、料理上手だね」


「なんかさ、店やりたいとか言ってるよ」


「レストランとか?」


「うん。本気なら応援しようと思う。俺、子供の頃から心配ばっかかけてきたから。まだ間に合うなら母さんに夢を追いかけてほしい」


「きっと間に合うよ。私も応援する」


あれっ、そういえば染みてない。グレープフルーツの果肉が。


あんなに痛かった口内炎が治っていた。






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