重なり合う、ふたつの傷


病院に行こうかと思うほどの疲労感も今はない。


夏休みの宿題というものにこんなに嘆いているのに、嘆いている事がちょっと楽しいくらいだ。




マンションでの生活も慣れてきた。


マンションの側に小さな公園があって、そこにいる子供たちと時々遊んだりして。


なにかに躓いたり、転んだりしている子がいたら、この手を差し伸べたい。



お母さんも隣に住んでいる一人暮らしのおばさんと仲良くなったみたいで、話し相手ができて嬉しそうだった。


一緒にランチを食べに行ったり、お菓子を持ち寄ってお茶を飲んだりしているようだ。



お父さんは相変わらず、大阪への出張が多い。疲れているはずなのに、いつも優しくて。


私はやっぱりお父さんが好きなんだ。


そういえば、天野くんもお父さんにどこか似ている気がする。


つまんでみたくなる鼻の高さとか。常に心にある優しさとか。





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