重なり合う、ふたつの傷
兎と森のカフェには今でもよく行っている。
この前『テレビの取材が来たけど断った』とマスターが言っていた。
私もその方がありがたい。
混んで入れなくなったら寂しいから。
いつ行っても気遣いのあるマスターに、私は人として惚れている。
あのカフェを愛しているお客さんはみんなそうだと思う。
お母さんが働いていた向かいのマンションも完成間近だろう。
愛で溢れている兎と森のカフェがこれ以上、高層マンションに囲まれませんように。
オアシスという風の行き場がなくなりませんように。